【第2797例会】PETSの報告(奥本会長エレクト)(2023年4月6日例会)
会長時間
『ゴッドファーザー』
今日は映画『ゴッドファーザー』の話をしたいと思います。「僧侶のお前がなんでゴッドファーザーなんだ」と突っ込まれそうですが、この映画は昨年、公開50周年を迎えました。私の好きな映画の一つで、DVDBOXも買って何度も観ましたし、マリオ・プーゾォの原作小説も読みました。
フランシス・コッポラ監督、1972年のアメリカ映画、アカデミー作品賞をはじめ多くの賞をとった世界的に大ヒットした映画で、主演のアル・パチーノは一躍スターダムに駆け上がりました。また、ニーノ・ロータが作曲した『ゴッドファーザー愛のテーマ』も世界的に大ヒットし、日本では尾崎紀世彦が日本語版を歌いました。
有名な映画なのでストーリーは今更述べませんが、ニューヨークマフィアのファミリーを軸に、「犯罪集団の恐怖と家族愛」という相反するテーマで描かれた作品です。
冒頭の結婚式のシーンから美しい映像に引き込まれます。明るい結婚パーティーと暗い屋内でボスのビトーが陳情を聞くシーン。この明暗の対比を象徴するようにストーリーは展開していきます。
映像美に見とれていると、突然怖ろしいシーンを突き付けられます。馬の生首とか、花嫁の乗った車が爆破されたり、兄ソニーが蜂の巣にされたり、血生臭い事この上ないのに、ニーノ・ロータの美しい音楽が大量の血を洗い流していきます。
特に最後の大量殺戮シーン、マイケルが聖パトリック大聖堂で洗礼式に臨みながら、各地ではマイケルの指示通り大殺戮が行われます。教会のパイプオルガンと神父の言葉をバックに、粛々と実行されていく殺戮、これほど美しく残虐なシーンはないでしょう。
ところが、私がこの映画で一番怖ろしく感じた事は主人公マイケルの変貌です。冒頭に登場したマイケルは、父の仕事(マフィア稼業)が嫌いな好青年でしたが、父が撃たれ、兄や妻が殺される事により怖ろしいボスへと変貌していきます。
「悪い人間が改心して良い人に成長していく」というストーリーの映画やドラマは沢山ありますが、「良い人間が背筋の凍るような悪人になっていく」というストーリーは初めて観ましたし、同時に、それがありえない事ではなく、むしろ現実社会ではこのパターンの方が多いのではないかと思えたからです。
『歎異抄』第13条、親鸞聖人の言葉、「さるべき業縁のもよおさば、いかなるふるまひもすべし」人は様々な縁によって、いかようにも変わっていくという、人間の怖ろしい内面を突き付けられた思いがします。この映画はそんな人間の怖ろしさを教えてくれる作品です。