【第2792例会】西条RC奨学生 劉一杰様(西条RC奨学生委員会)(2023年2月16日例会)

会長時間

『悲しみよ こんにちは』 フランソワーズ・サガン
 この作品は、サガンが18歳の時に書いた処女作で、1954年に発表され、1年後には100万部を超えて25ヶ国で翻訳され、ハリウッドで映画化もされ大ヒットしました。また、フランスのノーベル賞作家モーリヤックも絶賛し、サガンの名前と「悲しみよ こんにちは」は瞬く間に世界中に広まりました。
 まず、書き出しが印象的です。
 「ものうさと甘さが胸から離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しくも美しい名前をつけるのを、わたしはためらう・・・」と、「悲しみ」という言葉に疑問を呈する所から始まっています。
 18歳のサガンは大人達が使っている言葉ではなく、自分の言葉で自分を語るのだと宣言しているかのようです。
 ストーリーは17歳のセシルという少女が主人公です。母親は亡くなっており、父レイモンとその若い愛人エルザと一緒に南フランスで夏のバカンスを過ごします。そこにやって来たのが、亡くなった母親の友人アンヌ、やがて父レイモンはアンヌと親密になり結婚を決めます。しかし、それによってセシルは傷つき、父親とアンヌの仲を引き裂く策略を練り実行します。そして、大変悲しい結末が訪れます。
 この作品を初めて読んだのは、主人公セシルと同じ高校生の時です。まず、このシチュエーションにびっくりです。夏休みに何週間も別荘地で暮らすという事もあり得ないし、しかもセシルはお酒もがんがん飲むし、たばこも吸う。ボーイフレンドとヨットに乗り、「私にはわかった。私は大学に入り、勉強に打ち込むよりも、太陽の下で男の子とキスする才能の方に恵まれている」と言ってのけるような高校生です。この日本の高校生では想像もつかない世界に、何か憧れを抱きながら読みました。
 楽しく過ごしていたセシルに悲劇が訪れます。それはアンヌの出現によって始まります。アンヌは自分の価値観を新しく娘になるセシルに押し付けようとします。セシルはアンヌの方が正しいとわかっていながら反発します。
 皆さんも思春期の頃を思い出してみて下さい。自分がこれが良いと決めた方に進もうとした時に、親が反対します。後で考えると、親の言う事の方が正しいのですが、その時は自尊心を傷つけられ悔しい思いをする。そう言った経験が何度もありませんでしたか。
 これは国を問わず、若者に共通する感情だと思います。そこの所の心理描写をサガンはきめ細かく言葉に表していきます。これがこの作品が70年たった今でも、色褪せず世界中で読み継がれている所以だと思います。

連続100%出席 今谷会員48年、河内会員2年 おめでとうございます

 

西条RC奨学生 劉一杰 様 卓話