【第2789例会】年男の抱負(新開会員・藤本会員・宇治木会員・河内会員)(2023年1月26日例会)

会長時間

『停電の夜に』 ジュンパ・ラヒリ
 本屋に行きますと、海外小説文庫の棚はそんなに多くありません。ハリーポッターとか、アガサ・クリスティーとかの定番のミステリー小説が主で、数が限られています。しかし、そんな中でも、この『停電の夜に』は大概置いてある人気作品です。
 作者のジュンパ・ラヒリはロンドン生まれ、ニューヨーク在住のインド系アメリカ人女性作家です。彼女はデビュー作であるこの短編集で2000年のピューリツァーフィクション賞を受賞し脚光を浴びます。
 この作品はアメリカに暮らすインド系の若い夫婦、シュクマールとショーバの物語です。不幸にも初めての子を死産してしまった事から、二人の関係はギクシャクし始め、こじれていきます。
そんなある日、自宅に停電の通知が届きます。電気工事のため5日間、夜8時から1時間ほど停電になるというものです。夫婦はこの停電の1時間に、毎日お互いの秘密を打ち明け合う事にします。停電によって夫婦の関係はどう変わっていくのでしょうか。
 夫婦が語るお互いの秘密は、どれも他愛のないものでした。例えば、妻のショーバは、夫の母が泊まりに来た際に、残業だと言って友人と飲んでいたとか、夫のシュクマールは妻の雑誌から、気に入った女性モデルの写真を切り取って持っていたとかです。
 こうした罪の意識のないささやかな秘密を語り合っていくうちに、関係は修復されていくというストーリーかと思っていましたが、全く違った展開が待っています。
 最終的には夫婦を致命的に崩壊させる秘密を夫が話します。その秘密とは、ネタバレになるのでお話しませんが、この作品はハッピーエンドではなく、救いのない物語なのです。
 若いカップル、新婚夫婦はよく、「お互い何でも話して隠し事のないようにしましょうね」と誓い合います。あたかも、それが一番大切な愛の形だと言わんばかりに。
 しかし、絶対死ぬまで隠し通さなければならない秘密というものもあると思います。隠し通す事は不義なのではなく、思いやり、本当の愛なのです。その事を私達に教えてくれる作品です。
 長い年月を連れ添った夫婦でも、小さなきっかけ一つで、あっけなく信頼が失われる事もあります。一見、平穏な日常生活の中にも、残酷な影は潜んでいるものです。
 わずか32ページの短編小説です。ぜひ、手にとってみてください。

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