【第2779例会】「子ども食堂について」さとの会 宮田朋子様(2022年9月29日例会)

会長時間

『あしながおじさん』 ジーン・ウェブスター
 毎月一冊、好きな小説を紹介していますが、今月の一冊は世界中で100年以上読み継がれている児童文学の傑作『あしながおじさん』です。
 孤児院から高校へ通っていたジュディに、匿名の人物が彼女の文才に注目し、大学へ行かせる援助をしたいとの申し出がありました。そのための条件はたった一つ、大学での日々を手紙に書いて送ることでした。ジュディは大喜びでその申し出を受け、その謎の人物を「あしながおじさん」と呼んで、大学での出来事をせっせと綴ります。この物語はジュディから「あしながおじさん」へ宛てた手紙だけで構成されています。
 子供の頃、この本を読んだ時には、このシンデレラ的なハッピーエンドのストーリーの主人公を何とラッキーな少女なのだろうと思っていましたが、大人になって改めて読んでみると随所にこの少女の孤児としての苦悩が書かれてある事に気づきました。
 一番胸がつまらされるエピソードは、あるクリスマスの事、あしながおじさんから贈られたお金でジュディは自分にプレゼントを買います。そして、彼女はこれらを架空の家族からプレゼントされたものと思い込もうとするのです。
 「時計は父から、毛布は母から、湯たんぽは祖母から、ここの気候では私が風邪をひくといつも心配しているのです。そして、黄色い原稿用紙は弟のハリーから。絹の靴下は姉のイザベルからで、マシュー・アーノルドの詩集は伯母のスーザンからです。伯父のハリーからは辞典、伯父はチョコレートをくれると言ったのですが、私の強い希望で辞典にしてもらいました」
 親も兄弟も親戚もいない孤児のジュディがいかに寂しい思いでクリスマスを過ごして来たかが察せられます。
 物語の中で、もう一つ気になったエピソードがありました。それは日曜日の朝の礼拝での主教の言葉に憤慨したという話です。主教はこのように話しました。
 「聖書で我々に示された最も有益な約束をお話ししましょう。『貧しき者は汝らと常にともにある』貧しい人達は、私達が慈悲深い人間であり続けるためにこの世界に置かれているのです」
 つまり、貧しい人は裕福な人にとって善を行う為にある有益なもの、家畜のようなものだとジュディは受け止めたのです。これはどんな慈善活動でも、その行為よりも心持ちが問われているんだという事です。自らの善根を積むためにするんじゃない、功名心でするんじゃないという事です。この事は私達も奉仕活動をする上で気をつけなければならない事だと思います。
 さて、最後は思わぬハッピーエンドを迎えます。「あしながおじさん」とは一体誰だったのでしょう。まだ読んでいない方にネタバレになりますので申しませんが、ぜひこの本を手に取ってみて下さい。

ゲスト卓話 「こども食堂について」 さとの会代表 宮田 朋子 様

こども食堂の歴史や現在の活動等丁寧にご説明頂きました。
さとの会(https://pc.tamemap.net/3421251/activities/34212510116